私は造園業を営む家に生まれました。
庭の苔を踏んでは怒られ、ふわふわの苔の感触に虜になった子供のころ。
灯篭にむした苔、雨で濡れて艶やかな光を放つ鞍馬石
水のはったつくばいに小鳥たちが水浴びをしている様子は
子供ながらに美しいと感じていました。
10代に入ると日本的な美しさが野暮ったく見え、
留学先で見たアールヌーボー建築に惚れこみました。
仕事はアールヌーボーの美術品をよく扱う会社を選びました。
絵画・日本工芸・ジュエリーと幅広く扱う会社で
日本で一番美術品を取り扱うオークションハウスでした。
またいつか京都に帰って自分のギャラリーをつくろうと
初出勤の道で決意したのを覚えています。
美術品には30万点ほど触れました。
ルノワール、ピカソ、ロダン、マティス
樂茶碗の質感や黒田辰秋の螺鈿の茶器
上村松園の美人画、
速水御舟が描いた今にも泳ぎそうな上品で控えめな鮎の日本画。
高村光雲の木彫のドレープ、
エミール・ガレの儚くも美しい月光色ガラス
そういえばアンディ・ウォーホルに絵を描いてもらった方がお客様でした。
美しいものを鑑定し、査定をし、提案するという仕事は私には天職となりました。
そして美術商をはじめて10年目。次の章にきたような気がして
ギャラリーを立ち上げた次第です。
かつての作家やギャラリストが奮起したことで、今も残る美しきアートピース。
何万点と目にしてきましたが、今度は弊社が次の担い手になるような、
そんなギャラリーにしていければいいなと思っております。
NAKAMURA SEISODO GALLERY
中村優希